簿記の5要素とは?資産・負債・純資産・費用・収益の覚え方をわかりやすく解説
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こんにちは。まねきねこ(@lucky_cat_037)です。
「資産はもらって嬉しいもの、負債は嫌なもの」。簿記の5要素を、こんなイメージで覚えていませんか?
実はこの覚え方、簿記の世界では大きな間違いです。イメージだけで覚えていると、「負債も費用も、どっちも嫌なものなのに何が違うんだろう?」と迷ってしまったり、「この科目は5要素のどれ?」と聞かれたとたんに手が止まってしまったりします。
しかし、5要素を「お金の使い道」と「お金の出どころ」という2つのグループで考えると、それぞれの科目がどの要素なのかを、暗記しなくても自分で判断できるようになります。この記事では、簿記の5要素(資産・負債・純資産・費用・収益)の意味と見分け方をわかりやすく解説します。
この記事では以下のことがわかります。
- 簿記の5要素(資産・負債・純資産・費用・収益)それぞれの意味と、貸借対照表・損益計算書との関係
- 資産と費用、負債と純資産と収益が「似ている」理由
- 各科目が5要素のどれかを、暗記せずに判断する方法
なお、この記事で扱う簿記の5要素(資産・負債・純資産・費用・収益)は、簿記3級の試験範囲です。5要素はすべての仕訳の土台になる考え方であり、ここを理解しているかどうかが、この先の簿記の学習の理解度を大きく左右します。

資産はもらって嬉しいもの、負債は嫌なもの…でしょ?あれ、でも費用も「嫌なもの」な気がするけど、負債と費用って何が違うの?

イメージだけで覚えると、まさにそこでつまずくんだ。5要素はお金の使い道とお金の出どころで考えると、どの科目がどの要素なのかを自分で判断できるようになるよ!
簿記の5要素とは?資産・負債・純資産・費用・収益の全体像
簿記では、会社のお金にまつわる取引をすべて、資産・負債・純資産・費用・収益という5つの要素のどれかに分類して記録します。この5つを簿記の5要素と呼びます。
まずは、それぞれの要素がどのようなものかを一言ずつ確認しましょう。
- 資産(しさん)
- 現金や建物など、会社が持っているお金と、お金に変わるもの
- 負債(ふさい)
- 借入金など、あとでお金を返す義務のあるもの
- 純資産(じゅんしさん)
- 資本金など、株主から預かった返さなくてよい元手
- 費用(ひよう)
- 給料など、収益を得るために使われて消えたもの
- 収益(しゅうえき)
- 売上など、お金が増えた原因となるもの
そして、この5要素は決算書と次のように対応しています。資産・負債・純資産は会社のお金の状態を表す貸借対照表(B/S)に、費用・収益は会社の儲けの計算を表す損益計算書(P/L)に載ります。
この関係を1枚の図にまとめると、以下のようになります。

図のとおり、貸借対照表では左側(借方)に資産が、右側(貸方)に負債と純資産が並びます。損益計算書では、左側(借方)に費用が、右側(貸方)に収益が並びます。この「左右の配置」が、このあと解説する2つのグループ分けとぴったり重なってきます。
なお、貸借対照表・損益計算書の実際の作り方は、損益計算書・貸借対照表の作り方の記事でくわしく解説しています。
ここで、冒頭の「資産は嬉しいもの、負債は嫌なもの」というイメージに戻りましょう。たしかに、現金(資産)が増えたら嬉しいですし、借金(負債)は嫌なものに感じますよね。でも、この区別には大きな落とし穴があります。
例えば、給料や家賃などの費用。お金が出ていくので、これも「嫌なもの」のはずです。ところが簿記では、同じ「嫌なもの」に見える負債と費用が、まったく別の要素として扱われます。イメージだけの理解では、この2つをどう区別すればよいのか分からなくなってしまうんです。
5要素の分類は、嬉しいか嫌かという感情ではなく、会社のお金の流れにもとづいて決まっています。ここからは、その背景となる2つの基礎知識を確認していきます。少し遠回りに感じるかもしれませんが、背景から理解しておくと5要素の違いがすっと腹落ちするようになりますので、じっくりいきましょう。
前提知識:会社の活動は「調達・投資・回収」の3つに分かれる
会社は、お金を借りたり、商品を仕入れたり、仕入れた商品を販売したりと、数え切れないほどの活動(取引)をしています。実はこれらの取引は、大きく3つに分けることができます。
- 調達取引(ちょうたつとりひき)
- お金を株主や銀行から調達する取引。会社の活動の1つ目のステップ
- 投資取引(とうしとりひき)
- 商品や設備を買ったり、従業員に給料を払ったりして、事業のために投資し、価値やサービスを生み出す取引。2つ目のステップ
- 回収取引(かいしゅうとりひき)
- 生み出した価値やサービスの販売などによって投資の効果が生まれ、お金が増える取引。3つ目のステップ
お金を集めて(調達)、使って(投資)、増やして取り戻す(回収)。会社の活動は、この3つのサイクルの繰り返しです。この流れを1枚の図にすると、以下のようになります。

図のように、会社は調達→投資→回収のサイクルをぐるぐると回しながら活動しています。そして、この3つの分け方を知っているかどうかが、5要素の理解に直結します。
取引には2つの側面がある:複式簿記の考え方
もう1つの基礎知識は、それぞれの取引を2つの側面から考える、ということです。ここが簿記の面白いところです。
皆さんが「簿記」と呼んでいるものは、多くの場合「複式簿記」のことです。「複式」とは、1つの取引を2つの側面から考えるという意味です。具体的には、簿記には借方(左側)と貸方(右側)があり、別々の勘定科目を使って1つの取引を表現します。この表現方法(表現されたもの)を仕訳と呼びます。
ちなみに、借方と貸方という名称そのものに意味はありません。有名な覚え方があるので、ここで覚えてしまいましょう。
- 借方(かりかた):「り」が左に伸びるので左側
- 貸方(かしかた):「し」が右に伸びるので右側
それでは、先ほどの3つの取引を「2つの側面」から見てみましょう。例えば、株主からお金を調達すると、「お金が増える」という側面と、「そのお金は返さなくてよい元手である」というもう1つの側面があります。
同じように、設備を買えば「お金が減る」という側面と「お金が設備に変わった」という側面が、商品を売れば「お金が増える」という側面と「販売が原因で増えた」という側面があります。どの取引にも、必ず2つの側面があるのです。
3つの取引それぞれの2つの側面を、表に整理します。
| 側面①:お金の動き | 側面②:もう1つの側面 | |
| 調達取引 | お金が増える | どこから調達したのか |
| 投資取引 | お金が減る | 何に変わったのか |
| 回収取引 | お金が増える | どんな原因で増えたのか |
この2つの側面を、借方と貸方に分けて表現したものが仕訳です。3つの取引から1つずつ、仕訳の例を見てみましょう。
【具体例】
・調達取引:株主から現金1,000,000円を調達した
・投資取引:従業員に給料200,000円を当座預金から支払った
・回収取引:商品を300,000円で販売し、代金は掛けとした
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | |
| 調達 | 現金 | 1,000,000 | 資本金 | 1,000,000 |
| 投資 | 給料 | 200,000 | 当座預金 | 200,000 |
| 回収 | 売掛金 | 300,000 | 売上 | 300,000 |
どの仕訳も、左右で「お金の動き」と「その理由や変化先」をセットで記録していることがわかります。そして、この2つの側面に登場するものを5つに分類したものが、簿記の5要素なのです。
※なお、具体例の回収取引は掛け販売なので、この時点でお金そのものはまだ動いていません。「あとでお金をもらえる権利(売掛金)」が増えた、という形で記録しています。
なお、取引が仕訳から決算書までどのように流れていくのか、簿記全体の流れは簿記の流れ(簿記一巡)の記事で図解しています。

取引を2つの側面から見るってことは分かったよ。この2つの側面が、5要素のもとになってるんだね!

その通り!次はいよいよ本題、5要素が2つのグループに分かれているという話だよ。ここまでの内容が土台になるから、一気に面白くなるよ!
5要素は2つのグループに分かれる:お金の使い道とお金の出どころ
前提知識がそろったところで、いよいよ本題です。簿記の5要素は、バラバラの5つではありません。「お金の使い道」を表すグループ(資産・費用)と、「お金の出どころ」を表すグループ(負債・純資産・収益)の、2つのグループに分かれています。
この2つのグループを1枚の図にまとめると、以下のようになります。

図の右側、会社にお金が入ってくる流れ(出どころ)に並ぶのが負債・純資産・収益。左側、お金を使う流れ(使い道)に並ぶのが資産・費用です。ここからは、それぞれのグループの中身が「似ている」理由を、順番に見ていきましょう。
資産と費用は似ている:どちらも「お金の使い道」
まずは資産と費用です。この2つは、どちらも先ほどの投資取引の1つの側面から生まれています。投資取引の2つの側面は、「お金が減る」と「何に変わったのか」でしたね。
使ったお金が設備(資産)になるにせよ、給料(費用)になるにせよ、どちらも使ったお金が何に変わったのか=お金の使い道を表していて、根っこは同じなんです。
ここでもう1つ大事なことがあります。会社がお金を使うのは、それ以上に儲かると思ったからだということです。
・設備を買った→設備を使って製品やサービスを生み出し、設備の金額以上のリターンを期待している
・給料を支払った→従業員の働きで製品やサービスが生み出され、給料以上のリターンを期待している
そう考えると、なおさら資産と費用は似ているものだと思えてきますよね。
さらに、仕組みのうえでも同じ仲間だということを表すもう1つの特徴が、資産も費用もどちらも借方科目だということです。借方科目とは、仕訳で借方(左側)に書かれていれば増加し、貸方(右側)に書かれていれば減少する科目のことです。
- どちらも「使ったお金が何に変わったのか」=お金の使い道を表している
- どちらも使ったお金以上のリターンを期待してお金を使っている
- どちらも借方科目(借方に書かれていれば増加する)
負債と純資産と収益は似ている:どれも「お金の出どころ」
次に、負債と純資産と収益です。この3つは、調達取引と回収取引の1つの側面から生まれています。どちらの取引も「お金が増える」という側面があり、もう1つの側面として「どこから調達したのか」「どんな原因で増えたのか」を表すのでしたね。
では、増えたお金の正体は何でしょうか。例えばこの3つです。
・銀行から借りた→借入金(負債)
・株主から調達した→資本金(純資産)
・商品を販売した→売上(収益)
「どこから調達したのか」も、言い換えればお金が増えた原因ですよね。つまりこの3つは、お金が増えた原因=お金の出どころを表すという意味で、性質は共通なんです。
そして、同じ仲間だということを表すもう1つの特徴が、負債も純資産も収益もすべて貸方科目だということです。貸方科目とは、仕訳で貸方(右側)に書かれていれば増加し、借方(左側)に書かれていれば減少する科目のこと。借方科目である資産・費用のグループと、ちょうど対照になっています。
- どれも「お金が増えた原因」=お金の出どころを表している
- どれも貸方科目(貸方に書かれていれば増加する)

なるほど、5つがバラバラじゃなくて2つのグループなんだね。でも、同じグループの中では何が違うの?

いい質問だね!次はその「違い」を1つずつ見ていくよ。ここが分かれば、5要素の理解は完成だよ!
似ている要素の違いを見分けよう
2つのグループが分かったところで、今度は「違い」です。まずは同じグループの中での違い——資産と費用、そして負債と純資産と収益——を見分けます。最後に、冒頭で出てきた「負債と費用」のイメージの話にも決着をつけましょう。
資産と費用の違い:効果が翌期以降も続くかどうか
「根っこが同じなら、何が違うの?」って思いますよね。ざっくり言うと、使ったお金の効果が及ぶ期間が長いか短いかです。期間が長いと資産、短いと費用です。
もう少し正確に言うと、ある会計期間の中で効果が終わってしまうものを費用として、その会計期間を過ぎて翌期以降も効果が続くものを資産とします。「え?それだけ?」と思えるかもしれませんが、甘く見てはいけません。これが簿記の根幹となる考え方です。
そもそもなぜ会計期間で区切るのか、という前提は簿記はなぜ難しい?(ゴーイングコンサーン)の記事で解説しています。5要素の理解がさらに深まる内容です。
また、「効果が及ぶ期間で資産と費用を分ける」という考え方を実際に体験できるのが、決算で行う見越・繰延です。支払った家賃のうち翌期分を前払家賃(資産)へ振り替える、といった仕訳をします。くわしくは見越・繰延の記事で解説しています。
※厳密には、資産には貨幣性資産(現金や売掛金など、お金そのもの・お金に変わるもの)と費用性資産(設備など、いずれ費用になるもの)があります。ここでは費用性資産をイメージして読んでいただければ大丈夫です。
負債と純資産と収益の違い:返す義務と元手・稼ぎの区別
次に、出どころグループの中の違いです。性質が共通だと言うのなら何が違うの?という話になりますよね。違いは、どんな原因でお金が増えたかそのものです。
- 負債:銀行など債権者から調達した、あとで返す義務のあるお金(借入金など)
- 純資産:株主から預かった、返さなくてよい元手(資本金など)
- 収益:営業活動で稼いだお金(売上など)
あとで返す義務のあるお金なのか、返さなくてよい元手なのか、事業で稼いだお金なのか。増えた原因の違いが、そのまま要素の違いになるということですね。
※負債と純資産と収益には、返す義務の有無のほかにも違いがあります。例えば株主から預かった純資産は、株主が経営に意見を言える力を持つなど、経営への影響力という面でも性格が異なります。
負債と費用の違い:出どころか使い道か
最後に補足として、記事の冒頭で出てきた「負債も費用も、どっちも嫌なものなのに何が違うんだろう?」という迷いに決着をつけましょう。
負債は「お金の出どころ」のグループで、銀行などから借りて調達した、あとで返す義務のあるお金を表します。一方、費用は「お金の使い道」のグループで、使われて消えたお金を表します。つまりこの2つは、お金の流れの中で正反対の位置にいるんです。
「嫌なもの」という感情では同じに見えても、簿記のうえではグループからして違う、まったくの別物。だから仕訳でも、負債は貸方科目・費用は借方科目と、書く場所も左右逆になります。イメージでは区別できなかった組み合わせも、2つのグループで考えればすっきり見分けられますね。

「嬉しいもの」とか「嫌なもの」じゃなくて、お金の流れで考えるとスッキリ分かれるんだね!

その通り!この考え方さえあれば、科目が5要素のどれなのかは自分で判断できるんだ。次は実際に試してみよう!
各科目が5要素のどれかは自分で判断できる:覚え方より判断のコツ
ここまでの内容を使えば、科目の名前を丸暗記しなくても、どの科目が5要素のどれなのかを自分で判断できるようになります。判断の手順は、次の2ステップです。
①その科目は「お金の使い道」か「お金の出どころ」か
② ①の答えに応じて絞り込む
・使い道なら:効果が翌期以降も続けば資産、当期で終われば費用
・出どころなら:あとで返す義務があれば負債、返さなくてよい元手なら純資産、事業で稼いだお金なら収益
それでは、この2ステップが本当に使えるのか、練習問題で試してみましょう。5要素それぞれについて1問ずつ、全部で5問です。
まずは1問目。2ステップの使い方を一緒にやってみます。「会社が使う建物を買った。建物は5要素のどれ?」
①建物は、お金を使って手に入れたもの=お金の使い道のグループです。②では、使ったお金の効果はいつまで続くでしょうか。建物は買った年だけでなく、翌期以降もずっと会社の活動を支えてくれますよね。というわけで、答えは資産です。
残りの4問は、こちらです。同じ2ステップで、それぞれ5要素のどれなのかを考えてみてください。
【問題】次の科目は、5要素のどれでしょうか?
・給料
・借入金
・売上
・資本金
考えられたでしょうか。建物も含めて、5問まとめて答え合わせです。
| 科目 | 考え方 | 答え |
| 建物 | ①お金の使い道 → ②効果が翌期以降も続く | 資産 |
| 給料 | ①お金の使い道 → ②効果が当期で終わる | 費用 |
| 借入金 | ①お金の出どころ → ②あとで返す義務がある | 負債 |
| 売上 | ①お金の出どころ → ②営業活動で稼いだお金 | 収益 |
| 資本金 | ①お金の出どころ → ②株主から預かった返さなくてよい元手 | 純資産 |
どの科目も、暗記ではなくお金の流れから答えを導けました。初めて見る科目に出会っても、この2ステップで考えれば、5要素のどれなのかを自分で判断できます。

2ステップで考えたら、全部自分で答えられたよ!丸暗記しなくていいんだね!

そうなんだ!科目の名前をひとつずつ覚えるんじゃなくて、お金の流れで考えれば自分で判断できる。これが5要素を理解する一番の近道だよ!
まとめ:簿記の5要素はお金の流れから理解しよう
今回は、簿記の5要素(資産・負債・純資産・費用・収益)について解説しました。この記事のポイントをまとめます。
- 簿記の5要素は資産・負債・純資産・費用・収益。資産・負債・純資産は貸借対照表(B/S)に、費用・収益は損益計算書(P/L)に載る
- 5要素は「お金の使い道」(資産・費用)と「お金の出どころ」(負債・純資産・収益)の2つのグループに分かれる
- 資産と費用の違いは効果が翌期以降も続くかどうか。負債・純資産・収益の違いはお金が増えた原因
- 各科目が5要素のどれかは、暗記しなくてもお金の流れから自分で判断できる
「資産は嬉しいもの、負債は嫌なもの」というようなイメージから一歩進んで、お金の流れで考える。これができれば、5要素は暗記の対象ではなく、仕訳を支えてくれる頼もしい土台になります。
そして、この「なぜそうなるのか」から考える姿勢は、5要素に限らず簿記のすべての論点で役に立ちます。仕訳のルールも決算の手続きも、理由がわかれば丸暗記に頼らずに理解できるようになります。理由から理解する学習を積み重ねて、簿記を楽しんでいきましょう!
関連記事
5要素の理解が深まったら、「なぜ会計期間で区切るのか」という簿記の前提も知っておきましょう。

取引が仕訳から決算書になるまで、簿記全体の流れを図解でつかめます。

「資産と費用は根っこが同じ」を実感できる、資産が費用に変わる仕組みの解説です。

5要素の行き着く先である、損益計算書・貸借対照表の作り方はこちらです。


