簿記はなぜ難しい?ゴーイングコンサーンから理由を解説
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こんにちは。まねきねこ(@lucky_cat_037)です。
「簿記ってややこしい」そう感じていませんか?「このように処理してください」とテキストに言われるまま、納得感なく勉強が進みがちですよね。
この記事のタイトルには「難しい」と書きましたが、ここから先は「ややこしい」という言葉で進めます。覚えることが多いというより、処理が入り組んでいて話が追いにくい——簿記の難しさは、そちらに近いからです。
そして、そのややこしさには理由があります。企業には終わりが来ない前提だからです。終わりが来ないのに成績を報告しなければならないので、人が区切りを入れるしかない。その区切りが、いくつもの困りごとを生んでいます。
とはいえ「終わりが来ない」と言われても、それだけではぴんとこないと思います。性質が正反対のもの——終わりの日がはっきり決まっている活動と並べると、違いが見えてきます。この記事ではその代表として、学園祭の焼きそば屋と対比しながら、簿記がややこしく見える理由をたどっていきます。
この記事を読むと、以下のことがわかります。
- 終わりの日が決まっている活動なら、なぜ最後に一度数えれば済むのか
- 企業に終わりが来ないと、なぜ期間を区切ることになるのか
- 区切ったせいで生まれる3つの困りごとと、その片づけ方
なお、この記事が扱うのは、簿記3級の試験範囲である決算(決められた期間ごとに成績と財産をまとめる手続き)の「なぜ」にあたる部分です。ゴーイングコンサーンは仕訳を書く論点ではありませんが、決算のときになぜあれこれ調整するのかを理解するための土台になります。
また、この記事でいう「簿記」は、1つの取引を2つの面からとらえて記録する複式簿記を指します。家計簿のように出入りだけを書きつける方法は含みませんのでご了承ください。

終わりが来ないと、どうしてややこしくなるの?そこがつながらないんだよね。

そこだよね。そこがわかると、決算のあれこれが全部つながって見えてくるよ。
活動に終わりが来るかどうかで、話がまるきり変わる
簿記の話に入る前に、少し離れたところから始めます。世の中にはいろいろな活動がありますが、ここではその活動がどれだけの期間続くのか、という一点だけに注目してみてください。
細かく分ければきりがありませんが、大きくは次の2つに分かれます。
- 永久に続く活動か
- 期間限定の活動か
企業の活動は、永久に続くという前提のもとに成り立っています。それに対して、たとえば学園祭の焼きそば屋は期間限定の活動ですね。始まりと終わりが決まっていて、終わればそれきりです。
さらっと書きましたが、この分け方はとても重要です。終わりが来る活動なら、最後に一度数えるだけで成績が出せます。どういうことか、順を追って確かめてみましょう。
期間限定なら、最後に一度数えれば済む:学園祭の焼きそば屋
みなさんが学園祭で焼きそば屋をやることになったとします。お金の計算も全てみなさん自身でやることになりました。すると、資金の調達や道具・具材の準備、焼きそばの販売など様々なことでお金が動きますね。
具体的には、以下のような場面でお金が動きます。
- みんなからお金を集める
- 道具を買ってそろえる
- 焼きそばの具材を仕入れる
- 作った焼きそばを売る
- 手伝ってくれた人達へのお礼の品を買う
これらの場面が想定されますね。それぞれの取引で、資産や費用がどのように動くかはイメージできるでしょうか。動き方を整理したい方は、簿記の5要素の記事をご覧ください。
さて、いろいろとお金が動きましたが、無事に最終日の営業を終了することができました!この時、みなさんはこう思うはずです。

この焼きそば屋だけど、(お金の面で)成功したのかな?
そうです、いくら儲かったのか知りたいですよね。みんなの楽しい思い出がもちろん最重要ですが、最終的にどれだけ儲かったのかを確認したいところです。
そんな時、みなさんならどうしますか。少し考えてみてください。
どうでしょうか。最後に全部現金を確認して、そこから最初にみんなで出し合ったお金を差し引く——これで儲けがわかりますね。(そして、みんなで打ち上げして全部使い切るわけです。)
期間限定のこの活動なら、これで足ります。どんな取引があろうと、どれだけお金が動こうと、最後に一度だけ数えれば済みます。
※残った道具などは売って現金に変えたうえで数えます。最初に集めたお金は元手なので、儲けには含めません。借りたお金がある場合も、返したうえで確認しましょうね。
- 終わりが来るなら、最後に一度数えるだけで成績が出せる
- 活動が終わったときに残った現金から元手を差し引けば、その活動の成績がわかるから
企業には終わりが来ない:ゴーイングコンサーン
では、企業のほうはどうでしょうか。
さきほど、企業の活動は永久に続く前提だと書きました。これはこの記事だけの言い方ではなく、会計の世界できちんと名前が付いている考え方です。この前提をゴーイングコンサーンといいます。
- ゴーイングコンサーン
- 企業の活動は終わりが来ることなく、これからも続いていくという前提
焼きそば屋のように「最後にまとめて数える」ことができません。その「最後」が来ないからです。
終わりが来ないのに、成績は報告しないといけない
ところが企業には、成績を報告しなければならない相手がいます。
- 出資してくれた株主
- お金を貸してくれた債権者
- 税金を納める先
- 従業員
この人たちは、企業が終わるまで待ってはくれません。待っていたら、永久に報告できないことになります。
だから、人が期間を区切る
ここまでで、2つのことが出てきました。企業には終わりが来ない。それなのに成績は報告しなければならない。
この2つを両立させる方法は1つしかありません。終わりが来ないのなら、人が区切りを決めるしかないのです。「ここからここまでを1区切りとします」と報告する期間を決めて、活動の途中に線を引く。この線が決算日です。
こうして区切られた期間を会計期間といいます。会計期間ごとに、次の2つの書類で報告します。
- 損益計算書
- 一定期間の経営成績(儲けや損失)を記載する
- 貸借対照表
- ある時点での財政状態(持っている資産や、返す義務のある負債など)を記載する
では、この区切り方を焼きそば屋と並べてみましょう。2本の線にすると、違いがはっきりします。

上の線には終わりがあります。だから、最後に一度数えれば済みました。下の線には終わりがありません。右へ延び続けるので、どこかで区切らないと成績を出せないのです。赤い破線が、その区切り——決算日です。
区切ったせいで、3つの困りごとが生まれる
さて、ここからが本題です。
活動が続いているのに、途中に線を引いた。すると、その線をまたぐものが必ず出てきます。またぎ方はいくつかありますが、この記事では代表的な3つを取り上げます。
どれも、みなさんが決算日に立ったときに「どうすればいいんだろう」と手が止まる場面です。
①先に払ったお金が、次の期にまたがる
1年分の保険料をまとめて払いました。ところが決算日を迎えた時点で、過ぎたのは半年分だけ。残りの半年分はまだ使っていません。では、今年の費用になるのはどこまででしょう。この調整のしかたは、見越・繰延の記事で解説しています。
②1回買ったものを、何年も使い続ける
5年は使うつもりの機械を買いました。決算日が来ましたが、この機械はまだ1年しか使っていません。機械の代金は、どの年の費用なのでしょうか。この考え方は、減価償却の記事で解説しています。
③仕入れたものが、売れ残ったまま決算日をまたぐ
商品を仕入れて売りました。決算日が来たとき、仕入れた商品の一部は売れずに在庫として残っています。今年の儲けを出すとき、この売れ残りはどう扱うのでしょう。この求め方は、売上原価の記事で解説しています。

3つとも、決算日で線を引いたから出てきた問題なんだね。焼きそば屋なら悩まなくてよかったのに!
そのとおりです。焼きそば屋には終わりがあるので、最後に現金を数えれば済みました。この3つは、区切ったからこそ生まれた困りごとなのです。
その困りごとを片づけるのが、決算整理という技術
3つの困りごとには、どれも決まった片づけ方があります。決算日に行うこうした調整をまとめて決算整理といいます。
まだ使っていない保険料は来期へ送る。機械の代金は使う年数に配りなおす。売れ残った商品は今年の計算から外す。この3つはどれも「区切り線をまたいだものを、正しい期に置きなおす」作業です。決算整理にはほかの調整もありますが、まずはこの形をつかんでおくと、あとの学習が楽になります。
簿記を勉強していて「なぜこんな処理をするんだろう」と感じる場面の多くは、この決算整理です。ややこしいのは簿記ではなく、期間を区切ったことで生まれた状況のほう。簿記は、そのややこしさを片づけるための技術なのです。

ここが伝えたかったところなんだ!ややこしいけど、中身がわかるとものすごくきれいにできてるんだよ。簿記って本当によくできた技術なんだ!
まとめ:簿記がややこしく見える理由を理解しよう
簿記がややこしく見える理由は、1本の筋道でつながっています。
- 終わりが来る活動なら、最後に残った現金から元手を差し引けば成績がわかる
- 企業には終わりが来ない(ゴーイングコンサーン)のに報告は必要。だから人が期間を区切るしかない
- 区切ると線をまたぐものが出てくる。この記事で見た3つは、それを正しい期に置きなおす決算整理
テキストが「このように処理してください」としか書いていないときも、その裏には理由があります。決算整理が出てきたら、これは区切りをまたいだ何を動かしているんだろう、と問いかけてみてください。保険料も、機械も、売れ残った商品も、いずれもこの問いで説明がつきます。はじめて見る処理でも、理由から考えられるようになりますよ。
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何年も使うものの代金を、使う年数に配りなおす減価償却はこちら。

売れ残った商品を今年の計算から外す、売上原価の求め方はこちら。

決算整理が簿記全体の流れのどこにあたるのか、全体像はこちら。

取引で資産や費用がどう動くのか、5要素のつかみ方はこちら。


