減価償却の目的とは?資産を費用に変える仕組みをわかりやすく解説
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こんにちは。まねきねこ(@lucky_cat_037)です。
減価償却は、簿記3級の決算整理のなかでも必ず押さえておきたい論点です。「建物や備品などの固定資産の価値が下がった分を帳簿に反映する」と説明され、計算のやり方もそのとおりに習います。
ただ、その説明を読んでも、こんな引っかかりが残りませんか。
「この計算、そもそも何のためにやっているんだろう?」
「価値が下がるからやるのなら、値上がりしたときはどうするんだろう?」
「帳簿に書いてある金額って、今いくらで売れるかを表しているのかな?」
こうした疑問に、ひとつずつ答えていきましょう。先に結論をお伝えすると、減価償却の目的は「価値の減少を帳簿に反映すること」ではありません。本当の目的は資産の費用化——買った金額を、その資産を使う期間に分けて費用にしていくことにあります。
この記事では以下のことがわかります。
- 減価償却の目的が価値の減少を帳簿に反映することではない理由
- 「今の価値」を帳簿の金額にすると起きる3つの不都合
- 減価償却の目的=資産の費用化と、毎年の利益とのつながり
なお、この記事で扱う減価償却は、簿記3級の試験範囲です。計算方法は、3級で学ぶ定額法(毎年同じ金額ずつ費用にしていく方法)に限って解説します。
また、目的をつかみやすくするため、この記事の仕訳は「直接法」(資産の金額を直接減らす書き方。簿記2級で学びます)で書いています。簿記3級で学ぶのは、資産を直接減らさない「間接法」です。2つの仕訳の違いは減価償却の仕訳の記事でくわしく解説しています。

えっ、価値が下がるからやるんだって習ったよ。あの説明のどこが足りないの?

じゃあ逆に考えてみよう。もし本当に「今の価値」を帳簿に書くとしたら、どうなると思う?実は、困ることが3つ出てくるんだ。そこから減価償却の目的が見えてくるよ!
減価償却とは?「価値が下がるから」だけでは説明しきれない
まずは出発点として、減価償却がどう説明されるかを確認してみましょう。減価償却は、次のように説明されることがあります。
建物や備品などの固定資産は、使っているうちに年々価値が下がっていきます。そこで決算のときに、当期中の価値の減少分だけ、その固定資産の帳簿価額(会社の帳簿に記載されている金額)を下げます。これが減価償却です。
ところが、この説明だけでは足りないのです。間違いとまでは言いませんが、これでは減価償却が何のためにあるのかまでは見えてきません。
では、何が足りないのでしょうか。カギになるのは「価値の減少」という言葉です。
もし本当に「価値が下がったから、その分を帳簿に反映する」のだとしたら、帳簿価額には、その固定資産の「今の価値」が書かれているということになりますよね。ごく自然な読み方に思えます。
しかし、この読み方を突きつめていくと、会社の決算はうまく回らなくなってしまいます。ここから、「今の価値を帳簿に書く」と何が起きるのかを、順番に見ていきましょう。
減価償却が「価値の減少」だとしたら生じる3つの不都合
「帳簿価額には今の価値を書く」と決めたとしましょう。そのためには、まず固定資産の「価値」とは何を指すのかをはっきりさせないといけません。じつは、2種類あります。
- 正味売却価額:いま売ったら、手取りでいくらになるか
- 使用価値:これから使い続けることで得られる将来のお金を、いまの価値に直すといくらか
※この2つの名前そのものが簿記3級で問われることはありません。ここでは「価値と言っても2通りある」とだけつかめれば十分です。
つまり「今の価値を帳簿価額にする」とは、決算のたびにこのどちらかを計算し直して、固定資産の金額を増やしたり減らしたりするということです。価値が下がれば減らし、上がれば増やす。「価値の減少を反映する」という説明を素直に受け取ると、こうなります。
ところが、実際の減価償却はそうなっていません。定額法のような決まったやり方で、買ったときの金額(取得原価)を出発点に、帳簿価額を減らしていくだけです。増えることはありません。
なぜ、わざわざそうしているのでしょうか。価値を帳簿価額にすると、不都合が起きるからです。その不都合は、次の3つです。
- 実現していない収益が生まれ、税金や配当の支払いが必要になる
- 客観性のない情報で帳簿価額が決まってしまう
- 持っている固定資産すべての価値を毎年求めるのは、手間の面で現実的でない
ひとつずつ見ていきましょう。
不都合1:価値が上がると未実現の収益が生まれ、税金や配当の支払いが必要になる
1つ目は、価値が上がったときの話です。具体例で見てみましょう。
【具体例】備品を使っている会社の、1年目の決算
・年度初めに備品を100,000円で買って、その年度から使っている
・決算のとき、この備品が中古市場で品薄になっていて110,000円で売れると試算された
「今の価値」を帳簿価額にするなら、備品を100,000円から110,000円へ、10,000円増やすことになります。資産が増えるので借方は備品。では、相手科目(貸方)は何になるでしょうか。
決算のときに行うこの仕訳は、次のようになります。
※この仕訳は、実際の減価償却では行いません。「もし今の価値を帳簿価額にしたら」を考えるための、仮の仕訳です。書けなくても問題ありません。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
| 備品 | 10,000 | 評価益 | 10,000 |
貸方の評価益は、評価し直して増えた分を表す収益です。収益なので、損益計算書に10,000円の収益として載ります。その年の利益が、10,000円ぶん増えるわけですね。
すると、どうなるでしょうか。
国「おっ、儲かっていますね。では、そのぶん税金を納めてください」
株主「利益が出たんですね。では、配当で株主に還元してください」
利益が出たのですから、当然の話です。ところがこの10,000円は含み益(帳簿の上だけで増えた、まだ実現していない利益)で、実際に10,000円の現金が入ってきたわけではありません。そもそも、この備品は使うために持っているので、売るつもりもありません。
現金は1円も増えていないのに、税金と配当の支払いだけが増える。金額が大きくなれば、支払いのお金が用意できずに会社が立ち行かなくなることすらあります。手元にないお金に課税されて倒産する、というのはさすがに理不尽ですよね。
不都合2:客観性のない情報で帳簿価額が決まってしまう
2つ目は、金額の決まり方の話です。そもそも、正味売却価額や使用価値は、どうやって求めるのでしょうか。
正味売却価額なら、買い取ってくれそうな会社に見積もりを出してもらうことになります。ですが、実際に売るわけではありません。付き合いの深い会社なら「どうせ売らないなら、好きな金額で書いておくよ」ということも起こりえます。売る気のない見積もりに、客観性は期待できません。
もう一方の使用価値はどうでしょうか。こちらは、その備品がこれから生むお金を見積もって、いまの価値に直すものです。つまり会社自身が立てた予測であって、確かめようがありません。

どっちも、決める人によって金額が変わっちゃいそうだね。。。
そこが問題なのです。会計には「同じ経営をしていれば、同じ会計情報になる」という考え方が根っこにあります。当たり前のことを言っているようですが、裏を返せば人によって判断が変わる余地は、できるだけ減らしたいということです。その数字をもとに、税金や配当の金額が決まるのですから。
もっとも、会計から見積もりがなくなるわけではありません。見積もりに頼らざるをえない場面もあります。ただ基本的には、確かめようのない数字を土台にしないで済むなら、そのほうがよい——そう考えておいてください。
不都合3:すべての固定資産の価値を毎年算出するのは現実的でない
3つ目は、手間の話です。ここまで見てきたのは、備品ひとつぶんの価値を求める話でした。ですが、会社が持っている固定資産はひとつではありません。大きな会社になると、固定資産台帳(持っている固定資産を一覧にした帳簿)に数万点の資産が記帳されていることもあります。
それら全部について、毎年の決算のたびに買い取りの見積もりを取り、将来生む収益を予測する。現実的でしょうか。

売るつもりもない資産の見積もりを数万点分?そんなの頼んだら、取引先に嫌がられちゃうよ。

そうなんだ。資産の数が増えるほど、価値を求めること自体ができなくなる。これで3つそろったから、いちど並べて見てみよう!
さて、ここまでの3つを整理しておきましょう。
- 価値が上がると実現していない収益が生まれ、現金が入っていないのに税金や配当の支払いが必要になる
- 見積もりも予測も会社の判断しだいで変わるため、客観性のない情報で帳簿価額が決まってしまう
- 持っている固定資産すべての価値を毎年求めるのは、手間の面で現実的でない
「帳簿価額には今の価値を書く」という素直な読み方は、こうして行き詰まります。では、どうすればよいのでしょうか。
帳簿価額は何で決まる?売るための資産と、使うための資産
それではここから、さきほどの問いを考えていきましょう。帳簿価額は、何をもとに決めるのか。先に答えを書いてしまうと、その資産を何のために持っているかで決まります。
不都合1では、実現していない収益が生まれるのはおかしい、と考えました。ところが、実現していない収益でも計上する資産があるのです。
たとえば売買目的有価証券(値上がり益をねらって持っている株式や債券)です。会社はこれを決算のときに「今の価値」へ評価し直し、増えた分・減った分を利益や損失として計上します。なお、売買目的有価証券そのものを学ぶのは簿記2級ですので、ここでは考え方をつかむための例として読んでください。
なぜ、こちらは「今の価値」でよいのでしょうか。答えは値上がり益をねらって持っていて、売ろうと思えばいつでも売れるからです。たまたま決算の日に売っていなかっただけ、とも言えます。それなら、決算書を読む人が知りたいのは今いくらになっているかのほうですよね。
売買目的有価証券のように、値上がり益をねらって持っている資産は、「今の価値」を帳簿価額にする
では、固定資産は何のために持っているのでしょうか。備品も建物も機械も、売って儲けるために持っているわけではありません。使って製品やサービスを生み出し、その対価として収益を得るために持っています。
売るつもりがないのなら、「いま売ったらいくらか」は、それほど大事な情報ではありません。それよりも確かなものがあります。買うのにいくらかかったか(取得原価)です。
取得原価には、価値の見積もりにはない強みが2つあります。
客観性:相手のある取引で決まった金額なので、会社が自分の都合で決めたものではない
検証可能性:見積書・請求書・契約書といった書類が残るので、あとから確かめられる
だから固定資産の帳簿価額は、取得原価を出発点にする。そして、そこから決まったやり方で減らしていくのです。
減らす一方なので実現していない収益は生まれず、出発点が取引で決まった金額なので判断の余地がなく、減らし方も決まっているので手間もかかりません。3つの不都合は、どれも起きないままです。

同じ「資産」でも、何のために持っているかで書く金額が変わるんだね。考えたことなかったよ!

いいところに気づいたね!じゃあ次は、そもそもなぜその取得原価を減らしていくのか。ここに減価償却の目的があるんだ。
減価償却の目的は資産の費用化:毎年の利益を正しく表すため
帳簿価額の出発点が取得原価だとわかりました。では、そもそもなぜ、そこから減らしていくのでしょうか。ここに減価償却の目的があります。
先に答えを書いてしまうと、減価償却の目的は資産の費用化です。買った金額を、その資産を使う期間に分けて費用にしていくこと。もう一歩踏み込むと、毎年の利益を正しく表すためです。
※この「毎年の利益」を会計では期間損益と呼びます。ただし、この名前そのものが簿記3級で問われることはありません。
言葉だけではピンとこないと思うので、ここまで見てきた備品100,000円を、もう少し具体的な会社の状況に置いて考えてみましょう。
具体例:買った金額をいつの費用にするかで、毎年の利益は変わる
【具体例】この備品を5年間使う会社
・20X1年度のはじめに、備品を100,000円で買った
・この備品を使って、毎年30,000円の売上がある
・備品は5年間使うつもりで買った
・売上以外の収益、備品以外の費用はなし
この会社の各年度の利益は、いくらになるでしょうか。利益は「収益 − 費用」で求めますね。ところが、費用の考え方しだいで答えが2通りに分かれます。
パターン1:使ったお金を、その年の費用にする——20X1年度の費用は、払った100,000円。利益は 30,000円 − 100,000円 = −70,000円の赤字です。20X2年度からは費用がゼロなので、利益は30,000円になります。
パターン2:使う期間に分けて、1年分ずつ費用にする——1年分は 100,000円 ÷ 5年 = 20,000円。利益は毎年 30,000円 − 20,000円 = 10,000円で、5年ともそろいます。
この2つを並べると、次のようになります。いちばん下には、5年間の合計も入れておきました。
| 年度 | 収益 | 使ったお金 | パターン1 の費用 | パターン1 の利益 | パターン2 の費用 | パターン2 の利益 |
| 20X1 | 30,000 | 100,000 | 100,000 | −70,000 | 20,000 | 10,000 |
| 20X2 | 30,000 | 0 | 0 | 30,000 | 20,000 | 10,000 |
| 20X3 | 30,000 | 0 | 0 | 30,000 | 20,000 | 10,000 |
| 20X4 | 30,000 | 0 | 0 | 30,000 | 20,000 | 10,000 |
| 20X5 | 30,000 | 0 | 0 | 30,000 | 20,000 | 10,000 |
| 5年合計 | 150,000 | 100,000 | 100,000 | 50,000 | 100,000 | 50,000 |
ここで注目してほしいのが、いちばん下の5年合計です。5年間で、収益は150,000円、費用は100,000円、利益は50,000円。費用の合計も利益の合計も、パターン1とパターン2でまったく同じになっています。つまり減価償却は、会社が最終的に稼ぐ利益の総額を変えるものではありません。変えているのは、その利益を「どの年の利益にするか」だけです。この違いを1枚の図で見比べてみましょう。

左のパターン1は、1年目だけ大きく下へ落ち込み、そのあと高い水準が続きます。右のパターン2は、5年ともおなじ高さでそろっています。合計は同じなのに、見え方はまるで違いますね。
さて、どちらが会社の状態を正しく表しているでしょうか。少し考えてみてください。
答えは、パターン2です。
この会社は5年間、同じ備品を使って、同じ30,000円の売上をあげています。やっていることは毎年おなじです。違うのは「備品を買った年かどうか」だけ。それなのにパターン1では、20X1年度だけ70,000円の大赤字で、翌年からいきなり30,000円の黒字になる。これでは、経営がうまくいっているのかどうかが読み取れません。

たしかに、同じことをしてるのに赤字だったり黒字だったりしたら、良い会社なのかわからないね。
そこでパターン2のように、固定資産を買うのに使った金額(取得原価)を、使う期間に応じて各年度に割り振る。これが減価償却です。そうすることで、毎年の利益がその年の経営の実態を表すようになります。
ちなみに、毎年の利益をここまで重く見るのには、こんな背景があります。
会社はずっと続いていく前提で活動しているのに、
区切られた期間ごとに、外部へ成績を報告しなければならない
→ 終わりのない活動を人為的に区切るため、こみ入った計算が必要になる
この背景については、簿記はなぜ難しい?の記事でくわしく解説しています。簿記がややこしく感じる理由を、具体例からたどった入門記事です。
資産の費用化とは:いったん資産に計上して、毎年少しずつ費用にする
ここまでで「使う期間に割り振る」という方針は決まりました。あとは、それを帳簿の上でどう表すかです。
1年しか使わないものなら、買った年に全額を費用にすれば済みます。ですが備品は5年使うので、そうはいきません。ここで、ひとつ問題が出てきます。まだ費用にしていない残りの分は、帳簿のどこに置いておけばよいのでしょうか。
その置き場所が資産です。買ったときはいったん資産として計上しておき、そこから毎年少しずつ費用へ振り替えていく。備品100,000円を資産に計上し、毎年20,000円ずつ費用にしていく——これが資産の費用化です。
この記事で書く直接法では、決算のときの仕訳は次のようになります。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
| 減価償却費 | 20,000 | 備品 | 20,000 |
借方の減価償却費は費用、貸方の備品は資産です。借方に来た減価償却費は増え、貸方に来た備品は減ります。備品が20,000円減って、減価償却費が20,000円生まれた。つまり資産が費用に振り替わったわけですね。これが「資産の費用化」という言葉の中身です。
これを5年ぶん続けると、備品の帳簿価額は100,000円 → 80,000円 → 60,000円 → 40,000円 → 20,000円 → 0円と減っていきます。この動きを1枚の図にまとめると、次のようになります。

帳簿価額が階段状に減り、減った分がそのまま毎年20,000円ずつ減価償却費として出ていきます。5年目の末には帳簿価額はゼロ。買った金額100,000円が、5年かけてまるごと費用に変わったわけです。
なお、簿記3級で学ぶ間接法では、備品を直接減らさず「減価償却累計額」という別の科目にマイナスを積み上げていきます。書き方は違いますが、資産が費用に変わっていくという意味は同じです。2つの書き方の違いは減価償却の仕訳の記事で解説しています。

でも、資産と費用って全然違うものでしょ?資産が費用に変わるって、どういうこと?

いい疑問だね!じつは資産と費用は、簿記の5要素のなかでもよく似た性質を持っているんだ。
資産も費用も、どちらも「お金の使い道」を表すものです。だからこそ、資産から費用へ振り替えることができます。ここが腹落ちすると「資産の費用化」という言葉がすっと入ってきますよ。くわしくは簿記の5要素の記事で解説しています。
最後に、記事の前半で考えたことを思い出してみてください。この備品が中古市場で品薄になっていて、いま売れば110,000円になる、と試算した場面がありましたね。「もし今の価値を帳簿価額にするなら」、備品はこの110,000円で帳簿に載るはずでした。
ですが実際に帳簿へ載るのは、1年目の末で80,000円です。同じ備品の、同じ決算のときの金額なのに、まるで違う数字になります。
- 110,000円=いま売ったらいくらか(今の価値)から決めた金額。使うために持つ固定資産では採用されない考え方
- 80,000円=取得原価100,000円から費用にした20,000円を差し引いて決めた金額。使うために持つ固定資産で実際に採用されている考え方
この差こそが、帳簿価額は「今の価値」ではないということです。80,000円は「いま売ったらいくらか」でも「これからいくら稼ぐか」でもありません。買った金額のうち、まだ費用にしていない分——それだけの意味しか持っていないのです。
減価償却の目的がわかると、決算書の金額の意味もわかる
ここまでの理解は、試験を離れても役に立ちます。たとえば貸借対照表を開くと、建物がいくら、備品がいくら、と金額が並んでいます。この金額を、どう読めばよいのでしょうか。
帳簿価額は「今の価値」ではない——ここで、この理解が効いてきます。たとえば、賃貸用の不動産を持っている会社の決算書を見て、こんな疑問が浮かんだとしましょう。
「買った金額で帳簿に載せているけれど、その金額で売れるわけではないよな」
「減価償却で減らしているけれど、物件の値段が上がったら帳簿はどうなるんだろう?」
答えはもう出ています。帳簿の金額は上がりません。物件が値上がりしたかどうかに関係なく、取得原価から決まったやり方で減っていくだけです。いま売ればいくらになるかは、帳簿の外の話なのです。決算書に並ぶ金額をこう読めるようになると、会社の状態の見え方が変わってきます。
そして、この「取得原価から費用にした分を差し引いた残り」という帳簿価額の見方は、固定資産を売るときにそのまま効いてきます。売った金額と帳簿価額を比べて、差額が利益になるか損失になるかが決まるからです。くわしくは固定資産の売却の記事で解説しています。
また、ここで出てきた損益計算書・貸借対照表そのものの読み方は、損益計算書・貸借対照表の作り方の記事で解説しています。
まとめ:減価償却の目的を理由から理解しよう
最後に、この記事のポイントを整理します。
- 減価償却の目的は、資産の価値が下がったことを帳簿に反映することではない
- もし「今の価値」を帳簿価額にすると、3つの不都合が起きる(実現していない収益が生まれる/客観性のない情報で金額が決まる/毎年すべての資産を見積もるのは現実的でない)
- 帳簿価額をいくらにするかは何のために持っているかで決まる。使うために持つ固定資産は取得原価がベース
- 減価償却の目的は資産の費用化。買った金額を使う期間に割り振って、毎年の利益を正しく表すため
減価償却は、計算のやり方だけを覚えようとすると味気ない論点です。ですが「なぜこうするのか」から入ると、仕訳のひとつひとつが何をしているのかが見えてきます。帳簿価額が「今の価値」ではないと分かっていれば、決算書を読むときの目も変わります。
ちなみに、費用を使う期間に割り振るという目的は、決算整理のほかの論点にも共通しています。たとえば見越・繰延の記事で解説している見越・繰延も、費用や収益を正しい期に割り当てるための調整です。あわせて読むと、決算整理がひとつながりに見えてきますよ。
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費用を正しい期に割り振るという、同じ目的の決算整理。4つの経過勘定の見分け方を解説しています。

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