【不動産投資で簿記を活用】~帳簿価額と資産価値は異なる?~
こんにちは。まねきねこ(@lucky_cat_037)です。
持ち家にしても不動産投資にしても、住宅取得に興味がある方は多いと思います。学んでいる簿記の知識を日常生活にも活かしていくために、今回は不動産投資をする場合について簿記の考え方を学んでみましょう。
この記事ではこのような疑問を持つあなたの力となるべく、不動産投資における帳簿価額について詳しく解説していきます。
※帳簿価額とは、帳簿に書かれる物品の金額のことを指します。
一般に住宅に関する金額と言われて想像する金額には、以下のようなものがあると思います。
- 購入した時の金額
- 売却する場合の金額
- ローンの金額(総額もしくは残額)
実はこのどれも住宅の帳簿価額にはなりません。
※厳密には土地の値段だけは購入した金額になります。
そこでこの記事では、完全未経験から約2ヶ月の独学で簿記2級に合格した筆者が「簿記初心者でも分かりやすく」対話形式で解説します!
この記事を読むことで、帳簿価額の考え方をしっかりと理解することができます。それによって知識が定着し、簿記の知識を日常生活に活かせるようになりますよ。
先に結論を書いておきます!不動産投資における帳簿価額は以下のように考えましょう。
- 不動産投資における帳簿価額は取得価額をベースに考える
- ・取得時は取得価額を記帳する
・市場価値は帳簿価額に影響しない
・建物は年数の経過と共に減価償却していく
・土地は取得価額のまま金額の変更はしない - 物品の帳簿価額は物品の購入目的によって異なる
- ・不動産投資における不動産は販売目的でない
・販売目的でない物品において市場価値は重要ではない
さて、本題に入る前にここで軽く自己紹介をさせてください!
- 完全未経験から約2ヶ月の独学で簿記2級を取得
- 1級の勉強をする中で2級までの勉強がただの暗記だったと気づき、同時に簿記の楽しさに目覚める
- 簿記の勉強に悩んでいる方々の力になるために、簿記の深く楽しい理解を助けるブログ作成を目指している
- 妻と息子の3人家族
- 一緒に挑戦し続ける仲間を募集中!
詳しい自己紹介はこちらの記事をご覧ください!
今日は不動産投資について教えてね!帳簿価額がどうなるか気になってるんだ〜。
任せて!同じものでも目的や用途によって取り扱いが変わるんだ!これは日常生活も同じだよね。楽しく勉強していこう!
不動産投資の営業を受けた弟子ねこ
実はこの前、不動産投資の営業を受けたんだ〜。
そうなんだね、話を聞いてみてどうだった?
楽しかったよ!損益とか現金の動きとかシミュレーションして。
おー、簿記の知識も活きてきそうでいいね。
それにご飯もご馳走になったし。美味しかった〜。
それはよかったね(笑)
結局今回は断ったんだけど、話を聞いてる中で気になったことがあったんだ。簿記的にはどう考えるのか教えてほしいんだけどいいかな?
もちろん!どんな話?
どうやら弟子ねこは不動産投資の営業を受けてきたようですね。今回は断ったようですが、投資をする上で簿記の知識の有無はとても重要になってきます。
株式投資なら決算書から投資先の財務状態が読み取れるに越したことはありませんし、不動産投資であれば損益、現金の動き、借入金の返済、購入した固定資産などを帳簿上でどう取り扱うかを理解しているかどうかは不動産事業に大きな影響を及ぼすでしょう。
さて、弟子ねこの気になったこととはなんだったのか?続きを見ていきましょうか。
不動産の帳簿価額はいくら? 〜新築物件の価値〜
今回受けてきた不動産投資の案件なんだけど、新築ワンルーム投資だったんだ。
あぁ、不動産投資の営業を受ける案件としてはよく聞くよね。
その中で営業の人に、「家賃収入を得て、最終的には売却しましょう!これくらいで売れると思いますよ!」って言われたんだ。
不動産投資の終わりまでをシミュレーションしたんだね。いいことなんじゃない?
そうなんだけど、想定金額が明らかに高くてさ。そんな値段で売れるって楽観的すぎないかな?ってなって。
なるほどね、それは営業トークかもしれない。(笑)
だよね。まぁ、いくらで売れるかなんて想定は人によって違うわけだから仕方ないんだけど、ここで気になったことが出てきたんだよね。
ついに本題だね!
新築ワンルームってさ、新築プレミアムが乗ってるじゃない?例えば3,000万円で買った新築物件でも、ドアを一度開けた瞬間に市場価値は1~2割くらい下がるみたいな。
あぁ、よく聞くよね。新築は広告費とか乗ってるしね。
そうそう、でもそうなるとさ、購入価格3,000万円と資産価値に差が出るわけだよね?例えば1割下がったとすると、資産価値は2,700万円でしょ?
だね、1割だと300万円下がるから資産価値は2,700万円になって、下がった金額がそのまま購入価格と資産価値の差になるね。
そんな時って帳簿にどうやって書くのかな?買う瞬間は実際に3,000万円の価値があるはずで、だけど買った瞬間から3,000万円の価値は既にないってことになるんだけど。
なるほどね、それはとても大事な話だね。ちなみにまず結論だけど、帳簿には3,000万円で書くよ。2,700万円に下げるってことはしないね。
そうなんだ、なんで!?
大事なのは物品を購入する目的だよ。詳しく解説していくね。
弟子ねこの気になったことは、「不動産投資で購入した物件をいくらで帳簿に書くか」でした。
時の経過によって価値が下がるのはもちろん、新築物件は買った瞬間から価値が落ちるというのはよく聞く話ですね。
※もちろん販売会社にも利益が必要ですから、価値が下がったというよりも、価値より高い金額で購入したと表した方が適切かもしれません。
さて、簿記の世界においてはこのような場合帳簿には取得価額で記帳をします。今回で言えば3,000万円ですね。
なぜでしょうか?ここで重要なのは物品を購入する目的です。続きを見ていきましょう。
購入する物品の目的とは 〜販売して利益を得るかどうか〜
物品を購入する目的?不動産投資だよ?
もっと大きな括りの話になるよ。実は企業が帳簿に記帳する物品の金額っていうのは目的によって決まるんだ。これは今回の例に限ったことじゃない。そして、目的って何かというと、
- 販売して利益を得る目的
- 販売以外で使用する目的
大きくこの2つで分けて考えるんだ。
なるほど、今回だったら販売以外で使う目的だよね。
その通り。新築ワンルーム投資っていうのは売却益を得るための物ではなく、賃貸に出して賃料をもらうため、つまり販売以外で事業に使うために購入するんだよね。じゃあそんな場合に資産価値が重要かっていうと、そんなことはないんだ。
どうせ売るつもりがないから資産価値なんて関係ないってこと?
そうだね。それに販売目的以外の物品に対して、資産価値を重要視して帳簿に資産価値で記帳すると大きく不都合が3つあるんだよ。
- 資産価値の変動によって利益が計上されると配当や税金を支払う必要がある
- 客観性がない情報で帳簿価額が決まる
- そもそも資産価値の確認が現実的ではない
これら3つの不都合について詳しく知りたい方はこちらの記事を読んでみてください。減価償却について目的から解説しています。今回の記事から一歩踏み込んだような内容になっていますので、この記事の後に読むと理解度が増します。
込み入った話は別(減価償却の記事)でするとして、重要なのは物品の帳簿価額は購入する物品の目的で決まるということ。そして目的別にまとめると以下のようになるよ。
- 販売以外に使う目的の物品は取得価額を重要視する
- ・取得時は購入した金額で記帳する
・固定資産については決まった方法で減価償却していく - 販売して利益を得る目的の物品は価値を重要視する
- ・取得時は購入した金額で記帳する
・決算の時に価値を確認し、価値の増減に合わせて帳簿価額を増減させる
販売以外に使う目的で購入した固定資産については基本的には減価償却を行いますが、例外もあるのでここで軽く触れておきましょう。
減価償却しない固定資産はあまり多くありませんが、代表といえば土地です。また、取得価額が1点100万円以上の絵画なども基本的には減価償却しません。これらは非減価償却性資産と呼ばれ、価値が著しく落ちない限りは取得価額で記帳されたまま減価償却されません。
その理由は「耐用年数という概念が適用できないから」です。土地はいつか使えなくなるでしょうか?絵画は年数が経過することで見ることができなくなるでしょうか?答えはNOですね。
これらは時の経過によって使用できない状態にならないため、いうならば耐用年数が無限なんです。となると減価償却をしたくてもできないんですね。
購入したのが不動産屋だったら?
販売目的かどうかで帳簿価額は変わるんだね!じゃあもう一個聞いていいかな?
もちろんいいよ!
物件を購入したのが不動産屋さんだったらどうなるのか気になるな。僕が買う場合は大家さんの立場で、販売する目的じゃないから取得価額を重要視するんだよね?
うん、その理解で合っているよ。
一方で不動産屋さんの場合を考えると、それを販売して利益を得るつもりだから、価値を重要視するのかな?
そうだね。不動産屋にとって土地や建物は商品だからね。実際にそういう処理を全部やっているかは別として、簿記的な考えからすると価値で書いているはずだよ。つまり最初は取得価額で書くけど毎期決算の時に評価替えするということ。
なるほど、同じ物品を購入しても目的が違うと帳簿価額も違うんだね!勉強になったよ、ありがとうね!
いえいえこちらこそ!また気になることがあったら聞いてね〜。
最後の話は、「物件を購入したのが不動産屋だったら?」という点についてでした。不動産屋が物件を購入する場合、その目的は販売して利益を得ることです。つまり価値を重要視するんですね。
ここで覚えておいていただきたいのは、同じ物品を購入しても目的や用途が違うと取り扱い(帳簿価額)も違うということです。そしてこれは簿記の世界だけでなく、日常生活でもよくあることです。
簿記はガチガチのルールで縛られた固いものという認識をされている方も多いと思いますが、そんなことは決してありません。
同じ物品や活動でも取り扱いが異なることもありますし、正確にやるということを追求すると現実的に実務が回らないから簡便な方法も認めます、という考え方も多くあります。
身近なものだと思うと勉強の効率も上がるものです。せっかく勉強するなら楽しく勉強していきたいですね!
正確さと簡便さの比較例はこちらの記事をご覧ください。商品売買の三分法と分記法について、固定資産の売却と比較しながら解説しています。商品売買は簿記の基礎論点ですので、ぜひ深く理解しておきましょう。
まとめ 〜日常生活にも簿記の気づきはたくさんある〜
さて、今回は不動産投資を切り口に、物品の帳簿価額について書かせていただきました。皆さんに知っていただきたいポイントは以下になります。
- 販売以外に使う目的の物品は取得価額を重要視する
- ・取得時は購入した金額で記帳する
・固定資産については決まった方法で減価償却していく - 販売して利益を得る目的の物品は価値を重要視する
- ・取得時は購入した金額で記帳する
・決算の時に価値を確認し、価値の増減に合わせて帳簿価額を増減させる - 同じ物品を購入しても目的や用途によって取り扱いが異なる
繰り返しになりますが、簿記は日常にも生きる身近なもので、苦手意識を持ちながら勉強するのはもったいないと僕は思います。今回は少しでも身近に感じていただくために対話形式を中心に解説させていただきました。
この記事が少しでもあなたの簿記の深く楽しい理解を助けることができていたら嬉しいです。
これからも自分の言葉でかみ砕いて簡単に、でも意味や本質に重点を置いてお届けしていきますのでよろしくお願いします!
ではまた!
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