小口現金とは?インプレスト・システムの仕組みと仕訳をわかりやすく解説
※本ページにはプロモーションが含まれます

こんにちは。まねきねこ(@lucky_cat_037)です。
会社では、電車代やコピー用紙代のような少額の支払いが毎日のように発生します。そのたびに経理の担当者がお金を出して記帳していては大変です。そこで多くの会社は、少額の支払い用のお金をあらかじめ担当者に渡しておく仕組みを使っています。この手元に置いておくお金を記録する勘定科目が「小口現金(こぐちげんきん)」です。
ただ、この論点を学ぶと「会計係」「用度係」という当社の担当者が2人登場し、しかもお金を支払ったのに仕訳をしない場面まで出てきます。費用が出ているのに帳簿に載せなくていいの?と不安になりますよね。
しかし、「帳簿をつけるのは誰か」という役割分担から押さえれば、この後お話しする4つの場面(前渡し・支払い・報告・補給)の仕訳は暗記しなくても書けるようになります。この記事では小口現金の意味と仕訳を、簿記3級を勉強している方に向けて丁寧に解説します。
この記事を読むと、以下のことがわかります。
- 小口現金とはどんな勘定か(現金勘定との違い)
- なぜ支払いのときに仕訳をしないのか
- 前渡し・支払い・報告・補給の4つの場面の仕訳(報告と補給が同時のパターンも)
なお、この記事で扱う小口現金は簿記3級の試験範囲です。

コピー用紙を買ったのに仕訳をしないなんてこと、あるの?帳簿に載らないの?

あるんだ!なかったことにするわけじゃなくて、あとでまとめて記帳する仕組みなんだ。今日はそこから一緒に見ていこう!
小口現金とは?日々の少額の支払いのために手元に置く現金
まず、身近な例からイメージをつかんでみましょう。
【イメージ】
家計のやりくりで、日用品の買い物用のお金だけを封筒に分けて入れておく。大きなお金は銀行口座に置いたまま、日々の細かい支払いは封筒のお金から済ませる。
会社でも同じ工夫をします。会社の大きなお金(普通預金や当座預金など)は経理の担当者が管理したままにしておいて、日々の少額の支払いのために、担当者へ前もって渡しておく現金を小口現金といいます。小口現金は、現金や預金と同じく資産の勘定科目です。
ここで、この記事に登場する言葉を整理しておきます。
- 小口現金(こぐちげんきん)
- 日々の少額の支払い用として、担当者に前もって渡しておく現金(資産)
- 会計係(かいけいがかり)
- 会社のお金と帳簿(仕訳帳・総勘定元帳)を管理する担当者。仕訳をするのはこの人
- 用度係(ようどがかり)
- 小口現金を預かり、日々の少額の支払いを行う担当者。小口係とも呼ばれます
この2人の役割分担とお金の流れを、1枚の図にしてみましょう。

図のように、会計係が用度係へ20,000円を前渡しし(①)、用度係が日々の少額の支払いを行い(②)、あとから内容をまとめて報告し(③)、使った分の補給を受ける(④)、という流れです。ここで注目してほしいのは、②の支払いの時点では仕訳をしないという点です。なぜでしょうか。次で理由を見ていきましょう。
なぜ支払いのときに仕訳をしないのか

消耗品を買った時点で費用が出てるのに、仕訳しなくていいの?

取引をなかったことにするわけじゃないんだ。少額の支払いは、決まったタイミングでまとめて記帳する約束にしているんだよ!
もちろん、支払いをした時点で、費用という取引そのものは発生しています。なかったことにするわけではありません。ただ、帳簿(仕訳帳・総勘定元帳)をつけるのは会計係の仕事です。電車代や文房具代のような細かい支払いを、そのたびに会計係へ伝えて記帳してもらうのは、用度係にとっても会計係にとっても大変ですよね。
そこで用度係は、支払いのつど、日付・内容・金額を小口現金出納帳(こぐちげんきんすいとうちょう)という補助簿(メモのような帳面)に記録しておきます。そして、週末や月末などの決まったタイミングでまとめて会計係へ報告し、会計係が報告を受けてまとめて仕訳をします。もちろん、決算には間に合うように必ず報告して、帳簿に反映させます。
取引はなかったことにしない(費用は発生している)
ただ、少額の支払いを毎回記帳するのは大変
→ 用度係が出納帳やメモに記録しておき、決まったタイミングの「報告のとき」にまとめて仕訳をする(決算までには必ず反映)
つまり「支払いのときは仕訳なし」は、取引を省略しているのではなく、記帳するタイミングを報告のときにまとめているだけなんです。役割分担から考えると自然な流れですね。
定額資金前渡制度(インプレスト・システム)の仕組み
小口現金の運用には、代表的な方式があります。一定額を前渡しして、使った分だけを補給し、手元をいつも定額に戻す方式で、定額資金前渡制度(ていがくしきんまえわたしせいど)またはインプレスト・システムと呼ばれます。

なんでわざわざ同じ金額に戻すの?そのつど好きな金額を渡せばいい気がするけど…。

定額に戻すと「残高のチェック」がとても簡単になるんだ!
例えば定額が20,000円なら、「20,000円−使った分=手元に残っているはずの金額」という関係がいつでも成り立ちます。使った分は先ほどの小口現金出納帳(補助簿)に記録されているので、手元のお金と突き合わせれば、合っているかどうかをすぐ確認できます。もし基準になる金額が決まっておらず、手元のスタートが毎回バラバラだと、この確認はとたんに面倒になります。
つまり、定額に戻すのは、残高の管理を簡単にして、使いすぎや紛失にすぐ気づけるようにするためなんです。
この「定額に戻る」サイクルを図で確認してみましょう。

定額の20,000円から出発し、支払いで残りが14,000円になっても、使った6,000円の補給を受ければ、また20,000円から次の週を始められます。このサイクルがずっと続いていくのが、インプレスト・システムです。
小口現金の仕訳を4つの場面で確認
それでは仕訳です。①前渡ししたとき・②用度係が支払ったとき・③報告を受けたとき・④補給したとき、の4つの場面を、次の例で順番に確認していきます。
【具体例】
・会計係は月曜日に、定額20,000円を普通預金から用度係へ前渡しした
・用度係は1週間のあいだに、旅費交通費3,000円・消耗品費2,000円・雑費1,000円(合計6,000円)を小口現金から支払った
・金曜日に、用度係から支払いの報告を受けた
・報告を受けて、使った分の6,000円を普通預金から補給した
①前渡ししたとき:お金の置き場所を移す
まず、月曜日に20,000円を渡した時点の仕訳です。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
| 小口現金 | 20,000 | 普通預金 | 20,000 |
普通預金という資産が減り、小口現金という資産が増えました。会社全体のお金が減ったわけではなく、お金の置き場所が「銀行口座」から「用度係の手元」へ移っただけです。だから、この時点で費用は発生しません。
②用度係が支払ったとき:仕訳なし
週の途中、用度係は電車代や文房具代を小口現金から支払っていきます。このとき、仕訳はどうなるでしょうか。
この時点では仕訳なしです。用度係が小口現金出納帳に記録しておくだけで、帳簿(仕訳帳・総勘定元帳)は動きません。
理由は先ほど確認したとおりです。取引をなかったことにするのではなく、決まったタイミングでまとめて記帳するために、報告まで記帳を待っているのです。
なお、試験では「小口現金出納帳に記入した」ではなく、単に「メモを取っておいた」という設定で出題されることもあります。どちらの場合も、支払いの時点では仕訳なしです。
③報告を受けたとき:まとめて費用を計上する
金曜日、会計係は用度係から「旅費交通費3,000円・消耗品費2,000円・雑費1,000円を支払いました」という報告を受けました。内容を知ったこの時点で、初めて仕訳をします。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
| 旅費交通費 | 3,000 | 小口現金 | 6,000 |
| 消耗品費 | 2,000 | ||
| 雑費 | 1,000 |
報告で内容がわかったので、費用(旅費交通費・消耗品費・雑費)を計上し、その合計6,000円分の小口現金を減らします。これで用度係の手元は、20,000円−6,000円=14,000円になっています。
④補給したとき:定額に戻す
報告を受けたら、使った分の6,000円を普通預金から補給して、用度係の手元を定額の20,000円に戻します。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
| 小口現金 | 6,000 | 普通預金 | 6,000 |
これで翌週も、また定額の20,000円からスタートできます。
報告と補給を同時に行うとき:1本の仕訳にまとめる
実務でも試験でも、報告を受けたその場で、すぐに補給まで行うパターンがよく出てきます。この場合は③と④をまとめて、次のように仕訳できます。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
| 旅費交通費 | 3,000 | 普通預金 | 6,000 |
| 消耗品費 | 2,000 | ||
| 雑費 | 1,000 |
小口現金がいったん6,000円減って、すぐに6,000円戻るので、小口現金の増減を省略して費用と普通預金だけで仕訳できるわけです。③と④の仕訳を並べて見比べると、小口現金の分が消えているだけだとわかりますね。
なお、例えば「報告は金曜日・補給は翌週の月曜日」のように時点がずれる場合は、まとめずに③と④の仕訳をそれぞれの日に行います。同時のときだけ1本にまとめられる、と押さえておきましょう。
仕訳パターンのまとめ
最後に、4つの場面と同時パターンの仕訳を一覧で整理します。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | |
| ①前渡ししたとき | 小口現金 | 20,000 | 普通預金 | 20,000 |
| ②支払ったとき | (仕訳なし) | |||
| ③報告を受けたとき | 旅費交通費 など | 6,000 | 小口現金 | 6,000 |
| ④補給したとき | 小口現金 | 6,000 | 普通預金 | 6,000 |
| 報告と補給が同時のとき | 旅費交通費 など | 6,000 | 普通預金 | 6,000 |
※「旅費交通費 など」は、旅費交通費3,000円・消耗品費2,000円・雑費1,000円の3本をまとめた表記です

用度係がお金を使っても、帳簿が動くのは報告のときだけなんだね!

そのとおり!「前渡しで置き場所を移す→報告でまとめて費用にする→補給で定額に戻す」。役割分担がわかれば、この流れは自然に出てくるよ!
まとめ:小口現金の仕訳を理由から理解しよう
- 小口現金は、日々の少額の支払いのために用度係へ前もって渡しておく現金(資産)
- 少額の支払いは毎回記帳せず、決まったタイミングでまとめて記帳する。だから支払いのときは仕訳なし・報告のときにまとめて費用を計上
- 使った分だけ補給して定額に戻す(インプレスト・システム)から、残高の管理が簡単になる
- 報告と補給が同時なら、費用/普通預金などの1本にまとめられる
小口現金は、「会計係と用度係の役割分担」とイメージすると理解しやすくなります。
背景にある仕組みがわかると、4つの場面の仕訳は暗記しなくても自分で組み立てられるようになります。迷ったときは、「なぜ支払いのときに仕訳をしないのか」「手元はいくらに戻るのか」から思い出してみてください。
ではまた!
関連記事
小口現金(資産)・旅費交通費(費用)など、5要素の性格のつかみ方はこちら。

報告した内容が帳簿にどう流れていくのか、簿記全体の流れはこちら。

同じ現金まわりの論点、実際の現金と帳簿が合わないときの現金過不足はこちら。

会社の支払い専用口座、当座預金と当座借越の仕組みはこちら。


