【売上原価の基礎を簡単解説】〜意味・目的から解法まで〜
こんにちは。まねきねこ(@lucky_cat_037)です。
「売上原価」は簿記試験に頻出の超重要論点ですが、皆さん自信はあるでしょうか?
売上原価が何かを理解しないまま、仕訳を暗記して何とか解いている方も多いと思います。しかし、それでは少しひねった問題が出てくると手も足も出ません。
そこでこの記事では、完全未経験から約2ヶ月の独学で簿記2級に合格した筆者が「簿記初心者でも分かりやすく」売上原価の基礎について以下の点から解説します!この記事を読むことで、曖昧だった売上原価をしっかりと理解できるようになりますよ!
- この記事のポイント
- ・売上原価とは何か?
- ・売上原価の目的とは?
- ・売上原価はどうやって算出する?
- ・算出方法の簡単な覚え方
- ・ボックス図で流れを視覚的に理解しよう!
- ・実は売上原価の算出は繰延処理の一つだった!
さて、本題に入る前にここで軽く自己紹介をさせてください!
- 完全未経験から約2ヶ月の独学で簿記2級を取得
- 1級の勉強をする中で2級までの勉強がただの暗記だったと気づき、同時に簿記の楽しさに目覚める
- 簿記の勉強に悩んでいる方々の力になるために、簿記の深く楽しい理解を助けるブログ作成を目指している
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詳しい自己紹介はこちらの記事をご覧ください!
そういえば、売上原価が何かしっかり理解してなかったな。仕訳も理由からちゃんと理解したい!
理由や目的を理解すると記憶が定着するからここで理解していこう!
売上原価とは
売上原価という勘定科目を正確に理解しているでしょうか?分かっているようで、意外と腹落ちしていないということはよくあります。まずは言葉の意味から確認していきましょう。
言葉の意味を確認
売上原価についてざっくり説明します。
売り上げた商品やサービスの仕入れや製造にかかった費用のこと
非常に重要なのでもう一度書きます。売上原価は、売り上げた商品やサービスに対しての費用のみが計上されます。仕入れや製造にかかった全ての費用ではないので注意してください。
また、売上原価は利益の計算に使用されます。損益計算書において、売上から売上原価を引いた金額を売上総利益といい、さまざまな利益の中で最も基本となる利益の算出に用いられます。
※この記事では利益の計算については深く言及しませんのでご了承ください。
- 売上原価とは
- ・仕入や製造にかかった費用のうち、売り上げた商品やサービスに対する費用のこと
- ・仕入や製造にかかった全ての費用ではないので注意が必要!
- ・売上-売上原価=売上総利益
言葉での説明だけでは理解が難しいので、具体例を見ていきましょう。
売上原価の具体例
今回は商品売買の業態として、文房具屋さんを想定してみましょう。
- ボールペンを500円分仕入れた
- シャープペンを300円分仕入れた
- 消しゴムを200円分仕入れた
- 仕入れたシャープペンが500円で販売できた
このような場合を考えた時、仕入れ(下図の左側)の合計金額は500円+300円+200円=1,000円ですね。しかし、実際に販売できたのはシャープペンのみです。
先程説明した通り、売上原価は売り上げた商品やサービスに対してかかった費用のみです。そこでシャープペンをいくらで仕入れたか確認してみると、シャープペンは300円で仕入れていました。そこで、今回の例における売上原価(下図の右側)は300円ということになります。
売上原価の目的を解説
売上原価とは、仕入や製造にかかった費用のうち、売り上げた商品やサービスに対する費用のことだということを勉強しました。ここで皆さんに疑問を持っていただきたいことがあります。
売上原価という文字を見て、「売上」原価だから売上に対応する部分だけなんじゃないの?と思うかもしれません。言葉としてはその通りなのですが、なぜ?をしっかりと理解していきましょう。ここから先程の例を使って考えてみます。
- ボールペンを500円分仕入れた
- シャープペンを300円分仕入れた
- 消しゴムを200円分仕入れた
- 仕入れたシャープペンが500円で販売できた
この例における1日の売上総利益を計算してみましょう。
売上原価は先程説明した通り300円となります。そして、売上-売上原価=売上総利益のため、500円-300円=200円となります。
売上 | 仕入れた金額 | 売上原価 | 売上総利益 |
500 | 1,000 | 300 | 200 |
さて、ここで質問させてください。
※あなたはこの文房具屋さんを経営していて、毎日仕入れをしているとします。
多くの人にとって、答えはNOでしょう。売上500円に対して、1,000円分仕入れをして、販売できたのは300円分だけです。利益が200円ですよ、と言われたとしても、仕入れに使ったお金が返ってくるわけではありません。
売上の金額以上に仕入でお金を使っているのに利益が出るなんて不思議だね!
実は、簿記における利益とお金の出入りから考える利益には違いがあるのです。
※ここでいうそれぞれの利益の意味は以下になります。
- 簿記における利益・・・この日に販売した分だけを売上原価として算出した利益
- お金の出入りから考える利益・・・この日に仕入れた金額全てを売上原価として算出した利益
それではここで、理解を深めるために翌日の取引を考えてみます。
- 仕入れは行わなかった
- 前日に仕入れたボールペンが1,000円で、消しゴムが300円で販売できた
それぞれの文房具における売上、仕入、個別の利益およびそれらの合計を確認しておきます。
文房具の種類 | 売上 | 仕入 | 個別の利益 | 売れた日 |
ボールペン | 1,000 | 500 | 500 | 2日目 |
シャープペン | 500 | 300 | 200 | 1日目 |
消しゴム | 300 | 200 | 100 | 2日目 |
合計 | 1,800 | 1,000 | 800 | – |
さてこのような時、簿記における利益とお金の出入りから考える利益について見てみましょう。
※先程と同様に、まずはそれぞれの利益の意味を確認します。
- 簿記における利益・・・それぞれの日に販売した分だけを売上原価として算出した利益
- お金の出入りから考える利益・・・仕入を行った1日目に仕入れ金額の全てを売上原価として算出した利益
収益(売上)は変わりませんが、費用(売上原価)が異なります。それによって利益(売上総利益)にも違いが発生していますね。なぜそのような違いが発生してしまうのか?それには以下のような背景が関係してきます。
企業は「永久に続く前提のもと成り立っている」にも関わらず、
「決められた会計期間で外部に成績を報告する」必要がある
→活動を人為的に一定期間で区切ってややこしい計算をすることになる
なお、この背景についての詳細はこちらの記事をご覧ください。具体例を挙げながら、なぜ簿記がややこしく感じるのか?について解説した入門記事です。具体例として挙げた焼きそば屋が、一般的な感覚として身近に感じられる記事となっています。
さて話を戻します。お金の出入りから利益を考えるというのは、お金の動きが起きたタイミングに注目しています。仕入をし、お金が出ていった日に売上原価として費用を計上するんですね。
しかし簿記の世界において企業は永久に続く前提でした。そうなると、少し乱暴な考え方にはなりますが仕入れた商品はいつか必ず売れるという考え方ができるのです。そしてもちろん、売上が計上されるのは売れた時になります。
であれば簿記の世界では、売上原価の計上も売上に合わせようとなるわけです。つまり重要になってくるのは、「いつ買ったか」よりも「いつ売ったか」です。このような考え方から、売上原価は売り上げた商品やサービスにかかった費用のみとなるわけですね。
さてどうでしょうか?それぞれの違いをしっかりと理解できましたか?地味に思えますが、こういうところが簿記のつまづきやすいところであり、それと同時にとても楽しいところです。
売上原価の算出
ここまでで売上原価の意味と目的が分かりました。さて先程の例では、売上原価を算出するためにシャープペンの仕入れ値を確認していましたね。仕入れが3件、販売が1件でしたので確認できましたが、これが1日に数百件となったらどうでしょうか?
販売のたびに仕入れ値を確認するなんて気が遠くなりそうだね。。。
企業の規模によって取引の件数は大きく異なりますよね。そこで、多くの取引が日常的に起こる企業でも売上原価の算出ができるように算出方法が考えられました。
算出方法と具体例
売上原価の算出方法は以下になります。
売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高ー期末商品棚卸高
分かりやすくするために具体例を挙げて見てみましょう。
- 年度初めの在庫・・・500円分のボールペンと200円分の消しゴム
- 年度中の仕入れ・・・2,000円分のシャープペンと600円分のノート
- 年度終わりの在庫・・・400円分のシャープペン
この場合の売上原価を算出してみましょう。まずは売上原価の算出に必要な3つの金額を求めます。
- 期首商品棚卸高=年度初めの在庫の金額=500円+200円=700円
- 当期商品仕入高=年度中の仕入れの金額=2,000円+600円=2,600円
- 期末商品棚卸高=年度終わりの在庫の金額=400円
これらから売上原価を算出してみます。
売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高ー期末商品棚卸高なので、売上原価=700円+2,600円ー400円=2,900円になりますね!
このような計算をすることで売上原価(販売した分に対応する費用)を算出することができます。
あれ?何を販売したか確認してないよ?これで売上原価が算出できるの?
ここが非常に重要なところです。ここまで見てきたように、売上原価とは売り上げた商品やサービスにかかった費用のみとなります。しかしこの方法では、何を販売したか、その商品やサービスにいくらかかったかという情報が不要となります。そこがこの方法の素晴らしいところなのです。
もう一度算出式を見てみます。まずは赤字に注目しましょう。
売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高ー期末商品棚卸高
赤字の金額の意味を考えてみます。ここでは期首商品棚卸高と当期商品仕入高を合計していますね。この計算をすることでどのような金額が出てくるか。それは、当期売ることが可能だった商品の金額です。
なぜなら、年度初めに元々持っていた在庫に、年度中に買い足した金額を足していることになるからです。
さて、当期売ることが可能だった商品の金額が分かったわけですが、ここから期末に売れ残っていた商品の金額を引いたらどうなるでしょうか?実際に売れた商品の金額が分かる気がしませんか?ここで期末に売れ残っていた商品とは何だったか思い出してみると期末商品棚卸高でしたね。
もうお分かりでしょうか。それを式で表すと売上原価の算出式になるのです。
売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高ー期末商品棚卸高
売上原価は売り上げた商品にかかった費用を直接算出するのではなく、売ることが可能だった商品の合計金額から期末に売れ残っていた商品の金額を引くことで算出していたのですね。
売上原価の算出方法をすでに勉強していた人でも、このような点は知らなかったという方も多いと思います。(恥ずかしながら僕は1級の勉強を始めてから知りました。。。)しかし忘れないでいただきたいです。簿記はあくまで技術であり手段です。仕事で使うにしても教養として勉強するにしても、知識を活かして使うためにはこのような背景もぜひ理解しておきたいですね。
売上原価の算出仕訳
それでは続いて、先ほどの例で仕訳をしてみましょう。
※売上原価の算出仕訳は決算整理仕訳です。決算整理仕訳が何か、なぜこの言葉が重要なのかについてはこちらの記事をご確認ください。簿記一巡(簿記の流れ)について独自の図解で解説しています。
- 年度初めの在庫・・・500円分のボールペンと200円分の消しゴム
- 年度中の仕入れ・・・2,000円分のシャープペンと600円分のノート
- 年度終わりの在庫・・・400円分のシャープペン
- 期首商品棚卸高=年度初めの在庫=500円+200円=700円
- 当期商品仕入高=年度中の仕入れ=2,000円+600円=2,600円
- 期末商品棚卸高=年度終わりの在庫=400円
この時の決算整理仕訳は以下になります。
借方科目 | 金額 | / | 貸方科目 | 金額 |
仕入 | 700 | / | 繰越商品 | 700 |
繰越商品 | 400 | / | 仕入 | 400 |
期首の在庫を繰越商品勘定から仕入勘定に、期末の在庫を仕入勘定から繰越商品勘定に振り替えています。
決算整理仕訳はこの二つのみなので、仕訳自体はできる方も多いと思います。ここからは、なぜこの仕訳で売上原価を算出することができるかを考えていきます。
まず第一に、期中に仕入をしたことで行われた仕訳に着目しましょう。当期商品仕入額は2,600円のため、以下のような仕訳が決算整理仕訳とは別で期中に行われているはずです。
借方科目 | 金額 | / | 貸方科目 | 金額 |
仕入 | 2,600 | / | 買掛金 | 2,600 |
※必ず買掛金というわけではなく、現金や支払手形だったりもします。
ここで、期中仕訳と決算仕訳で登場した仕入勘定を合計してみます!
※仕入勘定は費用科目なので、借方だと+、貸方だとーですよ!不安な方は簿記の5要素について解説したこちらの記事で復習しておきましょう。
仕訳を書いた順に、+700円-400円+2,600円=2,900円ですね!
さてここで、先ほど求めた売上原価を確認してみましょうか。売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高ー期末商品棚卸高なので、売上原価=700円+2,600円ー400円=2,900円でした。
無事に同じ金額が出てきましたが、ここに落とし穴があります。
この疑問はその通りで、実は「決算整理仕訳後の仕入勘定=売上原価」なんです!
もともと仕入勘定は当期仕入れた金額でしたが、決算整理仕訳をすると売上原価になってしまうのです。
※もちろんテキストでも説明がありますが、理解していない人が多いと思います。仕訳の暗記で解けてしまう問題が多いからですね。
ここまでで売上原価の算出について、流れを確認することができました。一度復習してみましょう。
さてここからは、より理解を定着させるためにもう一歩踏み込んでみましょう!
魔法の言葉「しいくりくりしい」
まずは売上原価の算出仕訳を確実に覚えるために、魔法の言葉「しいくりくりしい」を説明します!売上原価の算出仕訳は以下の2つでしたね。
借方科目 | 金額 | / | 貸方科目 | 金額 |
仕入 | ○○ | / | 繰越商品 | ○○ |
繰越商品 | ○○ | / | 仕入 | ○○ |
この二つの仕訳で出てくる科目を順に並べると、
「仕入」「繰越商品」「繰越商品」「仕入」ですね。さらにすべてひらがなにすると、
「しいれ」「くりこししょうひん」「くりこししょうひん」「しいれ」です!それぞれの頭2文字に着目して、
「しいれ」「くりこししょうひん」「くりこししょうひん」「しいれ」
→「しいくりくりしい」となります。
ボックス図で流れを理解する
続いてここからは、売上原価を算出する流れをボックス図という方法で図示してみます。この図で視覚的に理解すると仕訳を暗記する必要がなくなります。
少し長くなりますが、非常に有効なのでしっかり理解しておきましょう!
※売上原価の算出だけでなく、他の論点でも活躍する手法です。
ステップ⓪から④まで、手順は5つになります。
ステップ⓪ ボックス図の準備
まずはボックス図を準備します。ここは取引とは関係なく、ただ記入するための箱を用意するだけなので、ここから先のステップと区別するためにステップ⓪としました。
以下のような図を用意します。このような図を「ボックス図」と呼びます。
もしくは下のような図を書きます。こちらは「T勘定」と呼ばれていて、線が少ない分書くのが楽なので実際にはこちらで書く人が多いでしょう。まずはボックス図で理解して、使うときはT勘定で書けばよいと思います。
ステップ① 期首商品棚卸高の記入
ステップ①は「期首商品棚卸高の記入」です。
※ここから先も先ほどの文房具屋さんの例を使っていきます。
- 年度初めの在庫・・・500円分のボールペンと200円分の消しゴム
- 年度中の仕入れ・・・2,000円分のシャープペンと600円分のノート
- 年度終わりの在庫・・・400円分のシャープペン
- 期首商品棚卸高=年度初めの在庫=500円+200円=700円
- 当期商品仕入高=年度中の仕入れ=2,000円+600円=2,600円
- 期末商品棚卸高=年度終わりの在庫=400円
年度初めに在庫を確認したら700円分の在庫があったわけです。数えた年度初めの在庫はボックス図の左上に記入します。
ステップ② 当期商品仕入高の記入
ステップ②では「当期商品仕入高の記入」をしていきます。
今回の例では年度中に2,600円分の仕入を行っていました。年度中の仕入額を確認したら以下のようにボックス図の左下に記入していきます。
ステップ③ 期末商品棚卸高の記入
続いてステップ③で、「期末商品棚卸高の記入」をします。
年度終わりの在庫は400円分のシャープペンでしたね。この金額はボックス図の右下に記入していきますよ。
ステップ④ 差額から売上原価を算出
それでは最後にステップ④で「差額から売上原価を算出」していきますよ!売上原価の算出方法は以下の式でしたね。
売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高ー期末商品棚卸高
この式をボックス図で表してみましょう。まずはボックス図の左側全体に注目すると、期首商品棚卸高と当期商品仕入高の合計が記入されています。
これはつまり、赤字の部分が表されていることになります。
売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高ー期末商品棚卸高
赤字の金額は当期売ることが可能だった商品の金額でしたね。売上原価を算出するにはここから期末商品棚卸高を引きます。そして期末商品棚卸高はボックス図の右下に記入されています。
すると売上原価はボックス図の右上に表されるわけですね。
ボックス図を理解すると仕訳の暗記が不要になる
ボックス図を使って売上原価算出の流れを解説してきました。どうでしょうか。視覚的に理解することで売上原価の算出をイメージしやすくなりませんでしたか?
売上原価の算出だけでなく、簿記の勉強は仕訳の暗記になりがちです。しかし、目的や流れを理解すると問題によっては仕訳が不要なことが多いです。ここまで使ってきた例で確認してみましょう。
- 年度初めの在庫・・・500円分のボールペンと200円分の消しゴム
- 年度中の仕入れ・・・2,000円分のシャープペンと600円分のノート
- 年度終わりの在庫・・・400円分のシャープペン
問題:上記の期間における売上原価を算出しなさい
この問題をもし仕訳で解くとしたらどうなるでしょうか。
決算整理仕訳と年度中の仕訳をそれぞれ書いていきます。
※勘定科目は極力省略して書きます。
借方科目 | 金額 | / | 貸方科目 | 金額 |
しい | 700 | / | くり | 700 |
くり | 400 | / | しい | 400 |
仕入 | 2,600 | / | 〇〇 | 2,600 |
※3つ目の仕訳は年度中の仕入れに関する仕訳ですが貸方科目は問題で与えられていないので〇〇としています
ここまで書いてから、電卓で700-400+2,600を計算します。
※使った数値に○をつけておくことで合計漏れを防ぐというのを忘れずにやっておきましょう。
さて次に、ボックス図を使ってみましょう。
T勘定(もしくはボックス図)を書いて数字(黒字の部分)を埋めていき、電卓で700+2,600-400と計算して出てきた2,900(赤字の部分)を記入し回答ですね。
さて、どちらの方法が良いでしょうか。個人的には圧倒的にT勘定(ボックス図)をお勧めします。T勘定(ボックス図)の良いところは時間の短縮やミスの防止だけでなく、売上原価算出の流れに沿っていることです。
「期首の在庫に当期仕入れた金額を足すことで販売が可能だった金額を出し、期末の在庫を引くことで売上原価を算出する」という流れの通りに計算しています。そのため売上原価の算出についてより深い理解につながります。この点からもT勘定(ボックス図)での算出がおすすめです。
- 計算時間が短縮できる
- ミスが防止できる
- 売上原価算出の流れに沿って計算することで深く理解できる
売上原価の算出は繰延処理の1つ
それでは最後に、売上原価の算出が実は繰延処理の一つということを解説していきます。
※実は別に特別なことをしているわけではありません。
テキストでは、売上原価の算出だけで1つの章を使って説明されていると思いますが、繰延処理の1つとしてまとめて理解してOKです!
※僕は、これってすごくもったいないことだと思っています。確かに売上原価の算出は重要度も高いので、個別で章を使ってもいいかもしれませんが、繰延処理の1つと言えるということは伝えるべきだよな、と思います。
それでは、具体的にどう繰延処理なのか見ていきましょう!
仕訳の確認と前払費用との比較
売上原価の算出仕訳は2つありました。
借方科目 | 金額 | / | 貸方科目 | 金額 |
仕入 | ○○ | / | 繰越商品 | ○○ |
繰越商品 | ○○ | / | 仕入 | ○○ |
これらがそれぞれ
- (仕入/繰越商品)・・・繰延処理の再振替仕訳
- (繰越商品/仕入)・・・繰延処理
となります。
見越・繰延処理についてはこちらの記事をご確認ください。見越・繰延処理について基礎から分かりやすく解説しています。この記事で挙げた、保険料の前払いをした時の仕訳とやっていることは同じです。
売上原価の算出仕訳も保険料の前払い仕訳も同じです。1つ目の仕訳で前期に行った繰延処理を再振替して資産を当期の費用とし、2つ目の仕訳で当期の費用を資産化することで来期に繰り延べています。
ちなみに両者の違いは再振替仕訳(1つ目の仕訳)を行うタイミングです。普通の繰延処理は期首に再振替仕訳を行いますが、仕入に関わる再振替仕訳は期末に繰延処理と一緒に決算整理仕訳で行います。
実は違いはそれくらいなのですが、仕入勘定が少し特殊なのと、商品売買自体が大きなテーマなので別で紹介されているのでしょう。
※「仕入勘定が特殊」というのは上でも書きました、「(決算整理仕訳後の)仕入勘定=売上原価」というところです。もともと仕入勘定は当期仕入れた金額だったのに、決算整理仕訳をすると売上原価を意味する勘定になってしまう、でしたね。
まとめ 〜簿記は関連づけて理解することが重要〜
さて、今回は売上原価の算出について書かせていただきました。
一度おさらいしてみましょう。
- この記事のポイント
- ・売上原価とは何か?
- ・売上原価の目的とは?
- ・売上原価はどうやって算出する?
- ・算出方法の簡単な覚え方
- ・ボックス図で流れを視覚的に理解しよう!
- ・実は売上原価の算出は繰延処理の一つだった!
売上原価の算出は、仕訳だけとりあえず暗記していたという人も多いと思います。もちろん処理の方法を知ることは重要なのですが、それ以上に重要なのは「この勘定科目は何なのか」「なぜこの処理をしているのか」だと僕は思います。
上でも書きましたが、簿記はあくまで技術であり手段です。仕事で使うにしても教養として勉強するにしても、知識を活かして使うためには背景から理解しておきたいですね。
この記事が少しでもあなたの簿記の深く楽しい理解を助けることができていたら嬉しいです。
これからも自分の言葉でかみ砕いて簡単に、でも意味や本質に重点を置いてお届けしていきますのでよろしくお願いします!
ではまた!
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